魔法少女まどか☆マギカの結末はいかに予想されたか:その1

このシリーズでは、魔法少女まどか☆マギカについて、他の記事では、あまり提供できないコンテンツであると思われる「10話までの放送から11話・最終話を予想する問題」について述べたいと思う。

簡単に経緯を説明する。魔法少女まどか☆マギカは、2011/3/11未明に10話の放送がMBSであった後、東日本大震災の影響で、2011/4/22未明まで11話と最終話の放送が休止になった。この一ヵ月半程度の間、ファンは11話と最終話の内容を予想しようという動きが広がった。私もこの予想に参加したものの一人である。早いもので、魔法少女まどか☆マギカの11話・最終話の放送が4/22に終わってから、もう、2ヶ月が経つ。実に感慨深い。

注:この記事は魔法少女まどか☆マギカのネタバレを含みます。

まず、このシリーズで目的とするのは、魔法少女まどか☆マギカを「説く」のではなく「解く」こと−すなわち、評論するのではなく、予想すること−であることに注意して欲しい。評論と予想の本質的な決定的な違いは、「予想」は、11話・12話を見る前にしか出来ないことだ。いかにフェアに注意して考察したとしても、既に結末を知ってしまった状態で「おそらく予想していたら自分はこう考えただろう」という内容と、結末を知らずに考察した内容は異なる可能性があるからだ。従って、11話・12話が放映されてしまった今では、11話・12話の内容を真の意味で「予想」することはもう出来ない。評論することしか出来ないのだ。

僕は評論には興味が無く、予想することに興味があった。それは、魔法少女まどか☆マギカというこの作品が、極めて高い完成度を持っているため、エンターテイメントとして何が重要かを考えることによって選択肢を狭められる性質を持っているからだ。端的に言えば、予想に耐えうる作品なのだ。そこで、僕は、11話・12話の放送日の2日前、4/20未明に、自分は今までの自分の考察をまとめ、様々な説の中から当時一番ありえそうだと思ったものを選び、放送に挑んだ。この記事において【】内は、4/20当時の自分の予想の文章そのままである。

まず、最初に立てた大方針を説明する。




大方針その方針を立てた理由結果
a.鹿目まどかが自らを犠牲にして暁美ほむらを助ける

  1. ファウストをモチーフにしだしたのは虚淵以外の第三者(おそらくイヌカレー)であるという情報がある。これが本当なら、第三者が見てもファウストを連想させるようなエンディングになっているはず。 】
  2. ファウストは、グレートヒェンが自らを犠牲にしてファウストを救う話】
  3. 【ほむら:ファウスト、まどか:グレートヒェンは、まどかの魔女名Kriemhild Gretchenよりほぼ確定】

なお、自分は後で証拠に残るように某掲示板に書き込んだのだが、その時の書き込みをどなたかが魔法少女まどか☆マギカwiki転載して頂けたようである。

b.鹿目まどかは自らの祈りで自分の魔女化をも防ぐ

  1. QB以外で魔法少女になったまどかの魔女化を防ぐことができそうなキャラはいない
  2. QBに関しては、「契約でQBに感情を持たせたら、QBが同情してくれて魔女化しないようにしてくれる」可能性はあるが、いくらなんでもご都合主義的過ぎるだろうという直感。

c.QBはエネルギー問題を解決してQB星に帰る
【作中の世界では,QBを出し抜いたとしても,QBがエネルギー回収ノルマを果たせないとエネルギー不足でやがて宇宙が滅びることになり,問題は解決しない.
だから,誰かがQBのエネルギー回収ノルマをも果たさなければならない.】
×

結論から言えば、a.とb.は当たったが、大方針としてc.を取り込んだためにc.説に符合するように調整した部分は当たらなかった。
まず、だいたい当たったものから見てみる。

a.とb.に従ったため、だいたい当たったもの:

対象 4/20時点での僕の予想 実際
鹿目まどか魔法少女になる願い 【私が魔女になった後、魔法少女も魔女もいない元の世界を返して】(時間を巻き戻すのではなく、暁美ほむらが転校してくる時点の世界から魔法少女と魔女を取り除いたバージョンの世界を新たに作り、今の時間軸の地球に上書きする) 「全ての魔女を、生まれる前に消し去りたい。全ての宇宙、過去と未来の全ての魔女を、この手で」
鹿目まどかが自分の魔女化をも防ぐ方法 全ての魔法少女と魔女がいない世界を願うことで、魔女化した自分自身を消す 全ての魔女を生まれる前に消し去ることを願うことで、魔女化した自分自身を消す
鹿目まどかの最後 暁美ほむらを含め全ての人間から記憶されなくなる 暁美ほむらと鹿目タツヤには記憶がある
「まどか…誰?」を言う役 暁美ほむら鹿目まどかのリボンの入った鞄を見つけてつぶやく) 巴マミ佐倉杏子
鹿目タツヤの役割 鹿目まどかが消えた世界で、まどかの家族に子供が残るようにするための仕掛け 鹿目まどかが消えた世界で、まどかの家族に子供を残し、暁美ほむらとの接点を作るための仕掛け

この中で、当時問題にしている人が殆どいなかったが自分が多大な注意を払っていたものとして、「鹿目タツヤの役割」がある。自分が魔法少女まどか☆マギカの1話を最初に見たとき、「なんだこれは!?」ととても異様に感じたのが、「主人公の弟の3歳児」である鹿目タツヤの存在だった。これについては、後で、何がどのように異様だったか書くかも知れない。

ここでは、完全なハズレになってしまったc.部分について、自分が、いかに、QBにノルマを回収させて星に返すことの出来たかもしれないストーリーをひねり出そうとしたかを読んで苦笑いしていただければ幸いである。基本的な仕掛けは、c.を満たすために、当時はまだそこそこの隆盛を保っていた「ワルプルギスの夜暁美ほむら」説(通称ほむワル説)を応用したものだ。ワルプルギスの夜には、時間軸を移動できる能力があり、それを使って突然出現すると考える。
暁美ほむらワルプルギスの夜になるときに回収できるエネルギーでQBがノルマを達成し、そのワルプルギスの夜鹿目まどかが他の全ての魔女と一緒に倒す−という形にすれば、QBはノルマを達成でき、鹿目まどかは魔女を消して、QBとまどかの間でwin-winの関係を作れるのではないかと考えた。


c.に従ったため、当たらなかったもの:

対象 4/20時点での僕の予想 実際
10話で鹿目まどかの能力が強くなっている理由 契約時の願いの違い 暁美ほむらの時間遡行
ワルプルギスの夜の正体 暁美ほむら暁美ほむらの能力に関連して、時間軸を移動できる能力を持つ 元々は一人の魔女です。そこにいくつかの魔女の波動が合わさって出現したという魔女です(出典:メガミマガジン7月号付録 魔法少女まどか☆マギカCOMPLETE BOOK )
ワルプルギスの夜を倒す方法 そもそも、他の時間軸から突然「具現」して、さんざん街を破壊した後、他の時間軸へ突然移動して消えてしまう性質の魔女である 結界内にいないこと以外は普通の魔女で、暁美ほむらでは歯が立たず、鹿目まどかの願いで「消し去られる」
QBのノルマ 突然他の時間軸からやってきたワルプルギスの夜(ワル夜A)に対して暁美ほむらは戦おう/逃げようとするが、歯が立たずに暁美ほむらソウルジェムが濁る→さんざん破壊したワル夜Aは、また突然、他の時間軸に移動して消えてしまう→暁美ほむらがのソウルジェムが濁りきり、ワルプルギスの夜になる(ワル夜B)。ワル夜Bは、Kriemhild Gretchenに匹敵する魔女であるため、ワル夜Bの誕生によって、この時間軸ではエネルギー問題が解決する。ワル夜Bは鹿目まどかの契約の願いで消される(厳密には、この時間軸の契約時点から後の半直線状の時間に干渉できなくなる)。よって、この時間軸では、QBのノルマが果たされ、魔法少女も魔女もいない平和な世界が実現できて、めでたしめでたし。他の時間軸のことは知らないよ。 鹿目まどかが円環の理になった後も、エネルギー問題は残り、QBのノルマは果たされない
QB エネルギー問題が解決したので、ノルマを果たしてQB星へ帰る ノルマが果たされないので、やっぱり、QBも地球にいる